事業をスタートし ビジネスを始めると、税務当局に申告、納付する義務が発生します。サラリーマンであれば給与からの源泉税の納付や年末調整など税関系はすべて会社が処理してくれるわけですが、自分自身が事業主(経営者)となると、従業員の給与から源泉税の申告・納付や年末調整の事務なども行わなくてはなりません。
また、サラリーマンのように源泉徴収によって毎月少しずつ納付するのではなく、確定申告によって一時期に納付することになり、税の負担も非常に重いものに感じられます。
このため、税の知識は事業主(経営者)にとって非常に重要な問題となります。そこで、税について少し触れておきたいと思います。
個人の場合
税の種類
個人の事業所得に対しては、一般に3種類の税が課税されます。
所得税、個人事業税、個人住民税の3種類です。
所得税は国に納める国税、個人事業税は県に納める県税、法人住民税は市町村と県に納める地方税ですが、それぞれの税の概要は次表のとおりです。
税の計算方法と確定申告
所得税の計算方法は、まずその年の1月1日から12月31日までの事業による収入金額からその収入を得るために要した経費を差し引いて、その1年間の所得金額を算定し(これを決算といいます。)、次にその所得金額から所得控除を行い課税所得金額を算出します。
所得控除には必ず受けられる基礎控除のほかに、一定の要件に該当すれば受けられる配偶者控除、社会保険料控除、扶養親族などの15種類があります。
最後に、課税所得金額に税率を乗じて税額を計算します。ここで計算した税額を翌年の3月15日までに税務署に申告することになるわけですが、これを確定申告制度といいます。
なお、県民税・市町村税と個人事業税については、この確定申告時に計算された所得金額をもとに県又は市町村が税額を計算し、県又は市町村から納付書が直接送られてきますので、確定申告を行った事業主(経営者)は何の手続きもする必要はありません。
税の概要
税の種類 | 税の内容 | 申告手続きなど | 納期 |
---|---|---|---|
所得税 | 当該事業の所得金額にかかる国税 | 確定申告期間(当該年の翌年の2月16日から3月15日)に税務署に確定申告書を提出 | 予定納税1期7月31日 予定納税2期 11月30日 確定申告分 3月15日 |
市町村税 | 市町村税所得金貨に応じてかかる所得割と、所得金額の多少に関係なく、一定の税額がかかる均等割りの2本立て | 所得税の確定申告をもとに市町村が計算し、納税者に通知納税者はその通知に基づいて納付 | 1期 6月30日 2期 8月31日 3期 10月30日 4期 1月31日 ※市町村により異なる場合があります。 |
県民税 | 県税所得金額に応じてかかる所得割と、所得がなくても平等にかかる均等割りの2本立て | 市町村税と同じ | 市町村税と同じ |
個人事業税 | 県税事業所得の金額に応じてかかる。
年間所得290万以下はかからない。 |
前年中の所得等を3月15日までに県に申告するのが原則(所得税の確定申告書を提出しておれば不要)申告書をもとに県が計算し納税者に通知、納税者は通知に基づき納付 | 1期 8月31日2期 11月30日 |
青色申告制度
個人事業を始めた場合の納税は確定申告によって行いますが、これには「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。申告する際の用紙が白いか青いかによって、この様な名前で呼ばれております。
一般の確定申告は白色によって行いますが、青色を選択した場合、次表のような様々な特典を受けることができます。この特典とは、所得の計算の際に認められる特別の経費です。
経費が増えればそれだけ税がかかる所得が減ることになり、税が安くなるわけですから、この節税効果は絶大です。
ただし、青色申告をする場合は、税務署への届出が必要となります。
青色申告する場合の各種特典
青色申告特別控除 | 正規の簿記の原則による記録をしている者は、その所得から年65万円または事業所得・不動産所得の合計額のいずれか低い額が控除されます。 |
---|---|
青色専従者給与の必要経費参入 | 一定の条件を満たす家族従業員に支払った適正な給与は全額必要経費となります。 |
貸倒引当金の設定 | 売掛金などの貸し倒れに備えるため、それらの年末残高の5.5%を掛けた金額が必要経費として計上できます。 |
退職給与引当金の設定 | 従業員(家族従業員は除く)の退職金に充てるための一定の金額を経費として計上できます。 |
純損失の繰越繰戻し控除 | 純損失が出た場合、その金額を翌年以降3年間繰り越して所得から控除できます。前年の黒字の金額に繰り戻して前年の税額から還付できます。 |
厳禁主義所得計算の特例 | 前々年分の事業所得、不動産所得の合計が300万円以下であれば、その年に実際に収入したり支出した金額で所得計算ができます。 |
法人事業の場合
税金の種類
会社の利益にかかる税金には、法人税、法人事業税、住民税の3つがあります。
法人税は国に対して納める国税、法人事業税は県に対して納める県税、法人住民税は市町村と県に納める地方税ですが、それぞれの税の概要は次のとおりです。
税の概要
税の種類 | 税の内容 | 申告手続きなど | 納期 |
---|---|---|---|
法人税 | 株式会社や有限会社などの法人の所得金額にかかる国税 | ・確定申告
法人は、事業年度終了日の日の翌日から2ヶ月以内に確定申告書を税務署に提出 ・中間申告 事業年度が6ヶ月を超える法人は、事業年度開始の日以後、6ヶ月を経過した日から2ヶ月以内に、中間申告書を税務署に提出 |
申告書を提出した法人は、その申告書の提出期限までに法人税を納付 |
市町村税 | 法人の資本等の金額によってかかる均等割と、法人税の税額によってかかる法人税割との2本立ての市町村税 | 市町村に申告・納付 | 決算終了後2ヶ月以内 |
法人県民税 | 法人の資本等の金額によってかかる均等割と、法人税の税額によってかかる法人税割との2本立ての市町村税 | 県に申告・納付 | 決算終了後2ヶ月以内 |
法人事業税 | 法人の行う事業所得に応じてかかる県税 | 上記法人県民税と併せて県に申告・納付 | 決算終了後 2ヶ月以内 |
法人税の計算 計算のあらまし
法人税の計算は、まず、法人が計算する決算利益に基づいてこれに前述した各種の調整を行って所得金額を計算します。次に、この所得金額に税率を掛けて税額を算出し、その税額から税額控除額を差し引いて納税額を算出します。
税額の計算
法人税の税率は、所得税のような超過累進税率ではなく、原則として比例税率になっています。
対 象 | 届出の名称 | 届出先 | 申請期間 |
---|---|---|---|
個人で事業を始める方 | 個人事業の開業届書 | 納税地の所轄税務署 | 開業の日から1ヶ月以内 |
所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書 | 最初の確定申告書の提出期限まで | ||
個人事業開始申告書 | 事業所所在地の 県財務事務所 |
開業後すみやかに | |
法人で事業を始める方 | 法人設立届書 | 納税地の所轄税務署 | 会社設立後2ヶ月以内 |
棚卸資産の評価方法の届書 | 設立第1期の確定申告の提出期限変更しようとするときは事業年度開始の日の前日まで | ||
減価償却資産の償却方法の届書 | 設立第1期の確定申告書の提出期限 | ||
法人設立申告書 | 事業所所在地の 県財務事務所 |
設立から1ヶ月以内 | |
青色申告を希望する個人 | 所得税の青色申告承認申請書 | 納税地の所轄税務署 | 開業の日が1月15日以前の場合は3月15にちまで 開業の日が1月16日以降の場合は開業の日から2ヶ月以内 |
青色専従者給与を支払う方 青色専従者給与に関する届書 |
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青色申告を希望する法人 | 法人の青色申告承認申請書 | 納税地の所轄税務署 | 設立の日から3ヶ月を経過した日と、設立の日の属する事業年度終了の日とのいずれか早い日の前日。 変更しようとするときは、事業年度開始の日の前日まで |
従業員に給与を支払う個人・法人 | 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 給与支払いを始めて1ヶ月以内 | |
源泉税の納期の特例を受ける個人・法人 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 |
随時(早ければ適用も早い) |