必要人員の検討

人員計画イメージ

必要人員の検討にあたっては、まず、どのような仕事があるか(職務分析)、どのような能力が必要か(職務評価)を検討します。そして、業務量、営業時間などを検討し、必要人員を割り出します。

また、小売店、飲食業、理美容、製造業などは、就業シフトを作成してみることにより必要人員の算出がしやすくなります。

業態の選定が終わり、経営の組織体が決まりますと、次にその組織体を構成する経営チームと社員の確保が必要となります。

通常起業時点では会社の規模は小さく、経営チームと社員は家族、学校時代の友人、サラリーマン時代の部下、地域の友人などが協力している形が一般的であると考えられますが、ここでは広く外部から社員(人材)を求める場合の留意点等について記述いたします。

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1 労働者を雇う際の知識

正規の労働者を雇い入れた場合には次のようなことに気をつけましょう。

一般的に正規の従業員とパートとの大きな相違点は、何といっても人件費です。また長期にわたって雇用するわけですから、それなりの技術指導など人材に投下するコストも相当なものとなります。

このように正規の労働者とパートとの人件費のコストを比較するとある程度の開きがあるのが一般的です。このため、そのコストに見合う分だけの生産性を上げなければなりません。
さらに、通常正規の労働者はその職場に長期にわたって働くつもりで就業していますので、当然その生活をその職場に頼っている場合がほとんどです。

次に、正規の労働者として雇うことのメリットはどうでしょうか。パートと違って、長期の安定した労働力として戦力化できるという大きなメリットがあるため、経営者は正規の労働者として雇い入れるわけです。

こうしたことから、一般的に正規の労働者は熟練を要する専門的な仕事に向いてますし、比較的単純で画一的な仕事はパートに向いているといえます。

以上のように、社員を雇い入れる際には、パートではまかなえないものか、外注などでまかなえないものかなど、十分に検討したうえで雇い入れるようにしましょう。

このほか、家族の一員を労働者として使用する方法があります。他人の労働力と違って、家族ですから協力度も自ずと異なります。

新たな労働力を導入する場合は、家族の一員の雇い入れについて、まずは当たってみるべきでしょう。起業時に家族の一員を労働者として雇い入れるケースはよくみられるケースです。

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2 パートを雇う際の知識

パートを雇い入れる際には、パートも一般の労働者と同じように「労働基準法」の適用を受けるということを知っておく必要があります。
この法律によってパートを雇い入れる際には、

(ア)勤務する場所、仕事の内容
(イ)始業・終業時間、休憩時間、休日、休暇、所定時間外労働の有無
(ウ)賃金の決定、計算や支払方法、賃金の締め切りや支払日、昇給
(エ)退職に関すること

を明示することが義務づけられております。とくにこの事項については、文書で交付することが必要です。
この事項については厚生労働省が作成した「労働条件通知書のモデル様式」を参考にすると便利です。

また、パートを含めて常時10人以上の労働者を使用する場合、使用者は就業規則を定めなければなりません。パートであっても年次有給休暇や産休、育児休暇や生理休暇等、取得する権利もありますし、解雇にあたっても一般労働者と同様で30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払うことが求められております。

このようにパートは非常に有効な労働力ですが、一般労働者と何ら変わりない権利を有しており、それを承知したうえで、いかにうまく雇用していくかが経営者としての腕のみせどころになります。

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3 採用紹介窓口

次に、採用紹介窓口としてどのような機関があるのでしょうか。

従業員の斡旋を受けたいときハローワーク(公共職業安定所)が、企業の必要とする従業員を確保するために、常用、パート、日雇労働者、新規学卒者(中・高校卒)、中高年齢者、障害者等の方々の職業紹介を行っておりますので、各ハローワークを活用されるとよいでしょう。

◎雇用保険制度
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/koyouhoken.html

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4 採用にあたっての届出書類

採用にあたっては、個人・法人にかかわらず次のような届出が必要となります。

対象 届出の名称 届出先 申請時期
労働者を雇う場合 労働保険の保険関係成立届
適用事業報告
労働保険の概算保険料の申告書
労働基準監督署
(農林水産・建設などの二元適用事業等については公共職業安定所にも必要)
労働者を使用するようになった日から10日間
適用事業報告は遅滞なく
雇用保険適用事業所設置届 公共職業安定所
労働基準監督署
労働者を使用するようになった日から10日以内
雇用保険被保険者資格取得届
常時10人以上の労働者を使用する場合 就業規則届 労働基準監督署 常時10人以上の労働者を使用する場合すみやかに
労働者に時間外労働・休日労働をさせる場合 時間外労働・休日労働に関する協定書 労働基準監督署 労働者に時間外労働
・休日労働をさせる場合、事前に
◎労働保険適用基準・保険料徴収制度
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudouhoken.html
◎労働基準法・労働条件
http://www.tokushima.plb.go.jp/jyouken/index.html

雇用保険関係の短時間労働被保険者は次のとおりです。
一般被保険者及び高年齢者継続被保険者のうち、短期間労働者である者は、通常の被保険者と区別され、短時間労働被保険者とされる。
具体的には、一週間の所定労働時間が通常の労働者の所定労働時間に比して短く、次のいずれにも該当する者

  • 一週間所定労働時間数20時間以上30時間未満
  • 雇用期間1年以上の見込

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5 社会保険の加入

社会保険とは、健康保険と厚生年金保険の二つを総称したものの名称です。
健康保険は、従業員と事業主が2分の1ずつ保険料を負担して、従業員が疾病にかかった場合に保険の給付を行うというものです。一方、厚生年金保険は、従業員と事業主が折半して掛け金を負担し、従業員が老齢になったときに、年金の給付を行うというものです。

  • 法人事業所と常時5人以上の従業員がいる事業所は原則、健康保険、厚生年金保険が適用されます。
  • 従業員を採用したとき、事業所は5日以内に「被保険者資格所得届」を保険者に提出します。

適用事業所と被保険者

◎法人事業所と5人以上事業所が強制適用の対象

すべての法人事業所、常時5人以上の従業員のいる個人事業所(一部業種を除く)は、強制的に健康保険・厚生年金保険の適用をうけます。
適用事務所と被保険者図
※事業所の適用をうけるときは、新規適用届と被保険者資格所得届を社会保険事務所等に提出します。(用紙は社会保険事務所等にあります。)
また、適応事業所に該当しなくなった場合にも届出が必要です。

適用事業所での常用的使用関係で被保険者に

適用事業所での常用的使用関係にある人が被保険者となります。これは、法律上の雇用契約などではなく、常用事業所で働き報酬を受けるという事実上の使用関係をいい試用期間中でも報酬が支払われるならば使用関係が認められます。この常用的使用関係があれば、国籍などには関係なく被保険者となりますが、日々雇い入れられる人など常用的使用関係にない人は、一般被保険者とはなりません。
被保険者適用図
※所在地が一定しない事業所に使用される人は、国民健康保険・国民年金に加入します。

厚生年金保険には70歳になるまで加入

70歳以上の人は厚生年金保険の被保険者にはなりません。適用事業所に使用されていても、70歳に達した人は、厚生年金保険の被保険者資格を失います。
健康保険には、適用事業所に使用されてている限り、何歳になっても被保険者として加入し(続け)ます。

使用的関係のパートタイマーも被保険者に

パートタイマーが被保険者となるかどうかは、適用事業所での身分関係だけでなく、常用使用関係にあるかどうかできまります。その目安は、(1)勤務時間と(2)勤務日数で、それぞれ一般社員の4分の3以上であれば被保険者とするのが妥当とされています。
(1)勤務時間
一日の所定労働時間が、一般社員のおおむね4分の3以上(一般社員の所定労働時間が1日8時間とすると、6時間以上)で該当します。日によって該当時間が変わる場合は、一週間をならし、所定労働時間のおおよそ4分の3以上であれば該当します。
(2)勤務日数
1ヶ月の勤務日数が、一般社員の所定労働日数のおおむね4分の3以上であれば該当します。一般社員の1ヶ月の所定労働日数は、必ずしも実出勤日数をさしていませんが、その事業所で同じような仕事をしている社員のおおよそ4分の3以上勤務していれば該当します。
ただしこれらは一つの目安です。一律にこれにあてはめて機械的にきめられるのではなく、就労の形態・内容を総合的に考えて判断されます。
事業主は、パートタイマーが常用的使用関係にある場合、資格所得届により、社会保険事務所等に届け出ます。通常、この届出により、社会保険事務所等が被保険者資格の確認・決定を行います。

パートタイマーと被保険者の関係

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6 社会保険料関係の届出書類

社会保険料関係の届出書類は次のとおりです。

対象 届出の名称 届出先 申請時期
社会保険の適用を受ける場合 健康保険・厚生年金
保険新規適用申立(認可申請)書
社会保険事務所 社会保険の適用を受けようとする場合
すみやかに
健康保険・厚生年金
保険被保険者資格取得届
国民年金・国民健康保険に加入する場合 国民年金資格取得(種別変更)届
国民健康保険資格取得届
市町村(年金課、保険課) 国民年金・国民健康保険に加入する場合
すみやかに

※社会保険庁リンク
◎医療保険制度概要 http://www.sia.go.jp/seido/iryo/index-top.htm
◎年金保険制度 http://www.sia.go.jp/seido/nenkin/index.htm

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7 健康保険の被保険者

主として被保険者の収入で生計を維持している人

健康保険の被扶養者になれるのは、主として被保険者の収入で生計を維持している人で、次のように分けて条件をみます。

被保険者と同居・別居いずれでもよい人 被保険者と同居していることが条件の人
●配偶者
(内縁関係でもよい)
●子、孫及び弟妹
●父母、祖父母などの直系尊属
●兄姉、伯叔父母、甥姪などとその配偶者、孫・弟妹の配偶者、配偶者の父母や子など左記以外の3親等内の親族
●内縁関係の配偶者の父母および子
●内縁関係の配偶者死亡後父母および子

3親等内の親族図

健康保険の被保険者図

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国民年金への加入と届出

国民年金の被保険者は職業等により3種類
日本国内に住む20歳以上60歳未満の人などは、すべて国民年金に加入します。
国民年金の加入者(被保険者)には、次の三つの種類があり、厚生年金の被保険者は国民年金の第2号保険者になります。

種別 対象となる人 保険料負担
第1号被保険者 農業、自営業、無職、学生など日本国に住む20歳以上60歳未満の人 個別に保険料を納める。
第2号被保険者 厚生年金保険・共済組合などの被用者年金制度の加入者本人で原則65歳未満の人(国民年金と被用者年金に二重に加入) 個別負担なし(厚生年金保険など被用者年金制度が一括して拠出)
第3号被保険者 第2号被保険者の被扶養配偶者で20歳以上60歳未満の人

厚生年金保険の被保険者は自動的に第2号被保険者
厚生年金の被保険者は、国民年金の第2号被保険者となります(65歳以上で老齢基礎年金等の受給権者を除く)。第2号被保険者の国民年金(基礎年金)に要する費用は、第3号被保険者分とともに厚生年金保険から拠出されますので、個別の負担はありません。
第2号被保険者の被保険者資格の所得手続は、厚生年金保険の被保険者資格所得によって自動的に行われ、被保険者が手続を行う必要はありません。

第一号の届出は市町村、保険料は国に納付
20歳以上60歳未満の自営業者や学生、無職者等は国民年金の第1号被保険者となります。20歳になったら14日以内に、住民票のある市(区)町村に「国民年金被保険者資格所得届(申出)書」を提出し、保険料を納めます。

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