個人起業と法人起業
目的が明確になり、事業を選定し、商品・サービスを誰に提供するかを決定し、必要な資金と最低限スタートに必要な経営チームが確保できれば、いよいよヒト、モノ、カネを有機的に動かす組織づくりに入ります。この場合に注意しなければならないことは、事業開始が即、起業家自身の社会的責任を伴うことです。

まず、どのような組織でスタートするのが最適かをまず判断しなければなりません。この場合、個人で事業を行ういわゆる個人起業と、法人で事業を行う法人起業の2つの形態があります。個人起業と法人起業のどちらを選定するかは、社会的信用を重視するかどうか、所得税の累進課税を勘案し節税対策になるかどうかなどによって決定されますが、この2つはそれぞれに異なった特徴を持っています。
個人企業と法人企業の主な違いは次のとおりです。
項目 | 個人企業 | 法人企業 |
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開業の手続き | 税務署、県財務事務所、市町村役場課税担当課への開業届け。 | 法務局への会社設立登記手続き。税務署、県財務事務所、市町村役場課税担当課への開業届け。 |
資金 | 個人で行うため、資金調達には限界がある。起業資金は元入金とされ、資本金の定めはない。 | 出資金のかたちで資金調達ができる。 |
メリット | 小資本で手軽に、一人でもすぐ起業できる。会社設立のように法的に決められた最低資本金を必要とせず、その分、資本的な負担が軽減され、事業に必要な資金と個人の生活資金を、自由に融通することができる。 | 対外的な信用が得られる第三者からも幅広く資金を集めることができる。 事業主が役員報酬をとることにより全体的に節税対策が可能。 |
デメリット | 取引に際して、社会的な信用という面では、会社組織に比べて劣る。第三者からの資金提供を受けにくい。 事業に失敗し負債を負った場合、その責任はすべて個人にかか り個人的な財産を失うばかりか、 一生かけても返済しなければならない危険性がある。 |
会社設立の手続きが頻雑である。資本金を用意しなくてはならず、起業時の資金負担が大きい。 決算時には複式帳簿による貸借対照表、損益計算書を提出しなくてはならず、その事務が複雑である。 |
法人の種類
合名会社 | 合資会社 | 合同会社 | 株式会社 | |
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設立時の最低資本金 | 下限額の制限額、1円からで 設立可能 | |||
社員の責任と設立時の最低社員構成(旧55条削除) | 無限責任社員(1名以上):法人も社員資格有り | 無限責任社員1名および直接有限責任社員1名(法人も無限責任社員になれる) | 間接有限責任社員(1名以上) | 間接有限責任社員=株主(1名以上) |
社員の出資 | 金銭その他の財産、労務・信用の出資も可能 | 無限責任者員は合名会社に同じ、有限責任社員は金銭その他の財産出資に限る | 金銭等の財産に限る・全額払込主義 | 間接有限責任社員=株主(1名以上) |
業務執行権 | 原則として社員全員に:定款自治 | 原則として社員全員に(有限責任社員にも):定款自治 | 金銭等の財産に限る・全額払込主義 | (代表)取締役:取締役+代表取締役:委員会設置会社=取締役会+(代表)執行役 |
会社代表 | 則として、業務執行社員全員が代表(定款または互選により会社を代表する社員を定めることができる | 各取締役又は、代表取締役 | ||
1人会社 | 社員の数が1名になることは解散事由とならない | 無限責任社員全員退社→合同会社化有限責任社員全員退社 →合名会社化 |
社員の数が1名になることは解散事由とならない | 社員の数が1名になることは解散事由とならない |
組織変更・定款変更 | 合資会社・合同会社・株式会社 | 合名会社・合同会社・株式会社 | 合資会社・合同会社・株式会社 | 合資会社・合同会社・株式会社 |
持分会社間の会社の区分の変更は定款変更、組織変更は株式会社と持分会社間の変更 | ||||
業務執行社員経営者の責任 | 会社に対して善管注意義務および忠実義務、、持分会社の第三者責任、業務を執行する有限責任社員の第三者責任、(代表訴訟と同様の措置):対会社責任の減免規定なし | 善管注意義務・忠実義務、第三者責任、代表訴訟、責任制限 | ||
取締役の選任 | 業務執行者1名以上(取締役という名称はない) | 原則1名以上 | ||
取締役会の設置 | 不要 | 原則任意 | ||
監査役 | 不要 | 原則任意 | ||
出資の払戻し | 任意退社 | 不可 | ||
社員の持分譲渡(投下資本回収方法) | 社員の入社、持分の(全部または一部)譲渡、会社設立後の定款変更については、原則として、総社員の同意を要する:業務を執行しない有限責任社員の持分の全部または一部譲渡は、業務を執行する社員全員の承諾があればよい(この場合に定款変更を生ずる場合、業務執行社員全員の同意で定款変更できる。):定款自治 | 原則自由。定款で会社の承認を要する旨の定めを置くことが可能(譲渡制限会社)→個々の種類株式ごとに譲渡制限の有無・内容を定めることができる | ||
社員(出資者)相互の関係 | 強い | 強い | 人的・物的会社(ハイブリッド) | 弱い人的会社 |
人的会社 | ||||
課税方式 | 法人課税+出資者が受け取った利益への課税(構成員課税):商法ではなく税法の行方次第 | |||
有限責任事業組合契約(LLP) | 法の組合契約の特則:法人格なし、出資者の責任は有限、複数の出資者が業務執行に関与することが前提。課税方式は構成員課税 |